【ホテル業界のDX】AR(拡張現実)を活用したホテルの集客アイディア
さまざまな業界で、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが急務とされていますが、ホテル業界も例外ではありません。
「観光DX(観光デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を耳にしたことがある方も、少なくないのではないでしょうか?
例えば、カスタマーサービスに多言語対応チャットボットを導入したり、旅館の浴室に人感センサーを設置して、タオル補充や清掃のタイミングに役立てるなど、すでに多くの宿泊施設がAIやIoTテクノロジーを運営に取り入れています。
そこで今回は、ホテルのDXの中でも、ここ数年ホテル業界で注目されている、AR(拡張現実)を活用した集客アイディアを紹介していきたいと思います。
ホテル業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性
そもそも、なぜホテル業界にとって、DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要なのでしょうか?
その理由は、より少ない人手で、より質の高いサービスをお客様に提供できることにあります。
DXとは、ただ単に業務をデジタル化して、効率性を高めるという意味ではありません。
それにより、お客様の利便性や満足度を向上させることが目的なのです。
つまりDXは、ホテルとお客様の両方にとってプラスになる取り組みであり、結果として、ホテルの集客にもつながっていきます。
AR(拡張現実)とは?
ホテル業界注目のARとは、Augmented Rialityの略で、日本語では拡張現実と訳されます。
実在する画像や映像に、バーチャルな視覚情報を合成することで、目の間に広がる現実の景色を仮想的に拡張するという意味です。
最近では、ゲームアプリ「ポケモンGO」や、カメラアプリ「Snapchat」、IKEAの家具配置シミュレーションアプリ「IKEA Place」など、スマホ向けのARアプリが多くリリースされているので、若い世代にとって、ARはすでに身近な技術になりつつあります。
また、ARは観光業界との相性がよく、下記のようなAR観光アプリを活用したサービスが次々と登場しています。
AR x 観光の事例
- 写真にスマホをかざすと、リンクされたGoogleマップで目的地が表示されるガイドブック
- 観光地に設置された看板にスマホをかざすと、AR動画で観光案内をしてくれるバーチャル観光案内サービス
- AR撮影場所に設置された看板にスマホをかざすと、有名人やキャラクターが登場して、一緒に記念撮影ができるサービス
- ホテル内に隠れているARキャラクターを見つける宝探し・スタンプラリーイベント
道案内や観光案内など、実用的な役割を果たすと同時に、エンターテイメントとしてユーザーを楽しませてくれる点が、ARアプリの魅力といえるでしょう。
さらに、ARアプリをダウンロードして使用する際に、Eメールアドレスでのログインをお願いすれば、自然な形で顧客情報を収集するのにも役立ちます。
ARとVRの違い
ARとよく似た言葉で、VR(バーチャル・リアリティ/仮想現実)という言葉もよく耳にしますよね。
ARとVRの違いを簡単に説明すると…
- AR:すでにある現実世界に、仮想の情報をプラスしたもの
- VR:いちから作り出した、現実には存在しない仮想世界
例えば、VRを使えば、ホテルのバーチャル・ショールームは、部屋の空き状況に関わらず、いつでも希望の客室タイプをご案内できます。
しかし、一般的にVRアプリの開発コストは、ARと比べて割高です。
その代わりに、ホテルのパンフレットにQRコードを設置して、スマートフォンをかざすとAR動画・画像が現れるという形で、ARによるバーチャル・ショールームを実現する方が、より現実的なアイディアといえるでしょう。
ホテル・旅館がARを活用すべき理由
ではなぜ今、ホテルでARを使ったDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されているのでしょうか?
ホテルがARを活用すべき理由として、つぎの4つが挙げられます。
- 視覚マーケティング効果が期待できる
- ステイケーションのエンターテイメントとして活用できる
- ゲストにとってメリットになる
- ARを活用する十分な環境が整った
ひとつずつ説明していきますね。
視覚マーケティング効果が期待できる
ホテルARを活用すべき理由の1つめは、視覚マーケティングとして高い効果が期待できることです。
「産業教育機器システム便覧」(教育機器編集委員会編 日科技連出版社 1972)によると、五感による知覚の割合は、視覚が83%。
視覚に訴えるマーケティングが、もっとも効果的であることがわかります。
ARにより、立体的で動的な視覚情報をお客様に提供することで、競合ホテルとの差別化を図りましょう。
感覚マーケティングについては、「ホテルが感覚マーケティングを活用するヒントと注意点」で詳しく解説しています。
ステイケーションのエンターテイメントとして活用
ホテルARを活用すべき理由の2つめは、ARアプリが、ステイケーションのお客様へのエンターテイメントになることです。
ホテル内で過ごす時間の多いステイケーションのお客様にとって、館内で楽しめるエンターテイメントがあることは、ホテル選びの際の重要なポイントになり得ます。
また、近場のホテルであっても、せっかくホテルに宿泊するのだから「非日常を楽しみたい」と考えている方も多いでしょう。
そんな方にとっても、まるで南国のリゾートにいるような景色を楽しめるARアプリがあれば、喜ばれるのではないでしょうか。
例えばマリオットホテルでは、2020年にARを活用したiPhone専用アプリ「Portal to Paradise」をリリースしました。
今いる場所に仮想のドアを置くと、そこからカリブ海やメキシコのリゾート地にある8つのマリオットホテルへとバーチャルな旅が体験できる、どこでもドアのようなARアプリです。
ゲストにとってメリットになる
ホテルARを活用すべき理由の3つめは、それが道案内アプリのような実用的なARアプリであれ、エンターテイメント目的のARアプリであれ、お客様にとってのメリットになる可能性があるからです。
先ほどもお伝えした通り、DXとは、お客様にとってプラスになるものでなければなりません。
カスタマージャーニーの各ステップをお客様の立場で想像して、あなたのホテルのお客様が、どのようなARサービスを必要としているのかを考えてみましょう。
ARを活用する十分な環境が整った
ホテルARを活用すべき理由の4つめは、お客様がARを楽しむための十分な環境が整ったことです。
AR導入を成功させるためには、「スマートフォン」が重要なカギになります。
総務省の調査によると、世帯におけるスマートフォンの保有割合は、2019年に8割を超えました。
ほかにも、下記のような興味深い数字が見られます。
- 世界中の旅行者の42%が、旅行の計画や予約にスマートフォンを利用している。(Tripadviser、2015年)
- Googleのモバイル検索が、2015年に初めてデスクトップでの検索を上回る。(BUSINESS INSIDER、2015年)
- 74%の宿泊客が、お気に入りのホテルに専用アプリがあれば利用すると回答。(Criton、2019年)
- 50.1%の国内旅行者が、直近の旅行でスマートフォンを利用して旅行商品の予約や購入をした。(JTB総合研究所、2019年」)
ARの導入はもちろん、これからのホテルのデジタルマーケティングは、スマートフォンユーザーを意識することが必要不可欠であることがわかります。
ARを活用したホテルの集客アイディア
ARは、どのようにホテルの集客に役立つのでしょうか?
ARを使ったホテルの集客アイディアをいくつかご紹介していきます。
インタラクティブな客室
ARを活用したホテルの集客アイディアの1つめは、客室にインタラクティブな要素を取り入れることです。
セルフチェックインや、デジタルキー、スマートフォン・タブレットを使ったルームサービスのオーダーなど、タッチスクリーンが当たり前のミレニアル世代、さらに若いZ世代にとって、ARを駆使したインタラクティブな客室は魅力的だと思いませんか?
例えば、イギリスのhub by Premier Innは、各客室の壁にロンドンのARマップが飾られており、スマートフォンをかざすと、そのエリアの情報が表示されるようになっています。
マリオットでは、客室にある水のボトルのQRコードにスマートフォンをかざすと、室内に飾られた絵を自分の好みに(スマホ画面上で)変更できるという、遊び心のあるサービスを提供。
Airbnbは、ドアのロック解除方法やお湯の出し方など、室内でわからないことが合った際に、スマートフォンをかざすと説明が表示されるARサービスを開発中です。
ホテルまでの道案内
ARを活用したホテルの集客アイディア1つめは、ARを使った道案内アプリをホテルの公式サイトに設置することです。
Google マップのモバイル版でも、JR東日本の駅構内や商業施設をARを活用して道案内する機能がリリースされています。
対象エリアが徐々に拡大していることからも、ARによる道案内への需要の高まりがうかがえます。
ARによる道案内では、実際の景色の上に道案内が表示されるため、平面の地図が苦手な方でも、迷うことなくホテルまでたどり着くことが可能です。
ホテルのモバイル版サイトに、このようなサービスが設置されていれば、お客様に安心感を与え、予約の後押しになるかもしれません。
ゲーミフィケーション
ARを活用したホテルの集客アイディア2つめは、ホテルのアプリにARゲームを導入することです。
2016年に世界的なヒットとなった「ポケモンGO」の人気は、リリースから5年経った今でも衰えず、つぎつぎと新しいARゲームが登場しています。
REPORTOCEANの最新レポートによると、世界のARゲーム市場は、2021年から2027年の予測期間に、21.96%のCAGRで成長すると予想されているほどです。
ホテル業界でも、数年前から、お客様の滞在体験を向上させるために、ARゲーム取り入れるトレンドが見られ、スタンプラリーなど、ホテルのイベントとして活用するホテルも増えてきました。
また、ホテル近隣の施設やサービスと提携すれば、お客様に地域との交流の場を提供することも可能になります。
ウエディングのカタログ
ARを活用したホテルの集客アイディア3つめは、ウエディングのカタログにAR動画を設定することです。
結婚式や披露宴の演出や、実際に出席者が入ったときの会場のスペース感などは、写真だけでは、なかなかイメージが湧きにくいですよね。
そこで、カタログに設定された動画を提供し、より高いコンバージョンを引き出してみてはいかがでしょうか?
また客室のショールームと同様に、宴会場のショールームにもARを活用すれば、希望の宴会場をいつでも見学してもらえるようになります。
SNSキャンペーン
ARを活用したホテルの集客アイディア4つめは、AR企画とSNSキャンペーンを組み合わせることです。
旅先での素敵な思い出は、SNSでシェアしたくなりますよね。
もし滞在先のホテルでAR企画をしていたら、自然と、その写真がSNSに投稿される確率が高くなるでしょう。
JTB総合研究所の「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査」によると、Z世代・ミレニアル世代女性の5割以上がSNSの投稿を見て、旅先や買うものを決定すると回答していることからも、ホテルの集客にSNSが影響していることがわかります。
さらに、お客様へのエンターテイメントとしてAR企画を提供すると同時に、例えば「宿泊券が当たる写真投稿キャンペーン」といった施策を実施することで、より高いマーケティング効果が期待できます。
国内ホテルでのAR導入例
海外のホテルだけでなく、最近では国内のホテルでも、ARを活用する事例が増えてきました。
そこでここでは、国内ホテルでのAR導入例をご紹介します。
- ホテル「FIRST CABIN」、ホテル法華クラブでは、公式サイトにAR道案内アプリを設置。
- 湯沢ニューオータニホテル「ナスパ あそびガーデン」では、アトラクションのひとつとして「AR砂場」を設置。
- 「N GATE HOTEL OSAKA」(エヌゲートホテル大阪)では、外国人旅行客が帰国時のバスを待る間のエンターテイメントとして、ホテルロビーにウェブARを採用。
同時に、そこで撮影した写真を指定のタグをつけてインスタグラムに投稿すると、ホテル売店のクーポンが当たるくじ引きキャンペーンを実施。 - ザ ロイヤルパーク キャンバス 名古屋では、ARウェルカム動画、ARマップ、キャンバスラウンジに隠された「キャンバスコイン」を見つけると特典がもらえるARゲーム、ARを使ったレゴランド・ジャパンとの特別コラボ企画など、ARを活用したサービスを多く提供。
このように、国内のホテルでもARの導入が進んでいます。
特にZ世代・ミレニアル世代をターゲット層にしているホテルであれば、競合ホテルとの差別化に役立つのではないでしょうか?
ホテルの予約システムもモバイル対応を重視
ホテルにおけるAR導入のカギはスマートフォンにあると説明したが、これはホテルの予約システムにも同じことがいえます。
Googleによると、8割近くの旅行者が、スマートフォンでリサーチをした後に宿泊予約。
JTB総合研究所の調査によると、宿泊予約全体の3分の1はスマートフォンによって行われているとのこと。
ホテルが直接予約を増やしていくためには、スマートフォンユーザーの使い勝手に考慮したウェブサイトや予約システムが必要不可欠なのです。
WASIMILの予約システム
WASIMILの自社予約システムは、閲覧している端末のスクリーンサイズに応じて、ウェブサイトのデザインが自動的に変わるレスポンシブデザインです。
ほかにも、下記のような機能や特徴が備わっています。
WASIML予約システムの機能・特徴
- 10言語対応
- ホテルのウェブサイトと公式Facebookページに組み込み可能
- 宿泊を検討したお客様の予約行動の分析
- 直感的に使えるシンプルなデザイン
- ホテルのウェブサイトにあわせてカスタマイズ可能
- アドオン機能で追加サービスを販売(クロスセル)
- 通信手数料なし
- クレジット決済連携済み
- レスポンシブデザイン
まとめ
今回は、ホテル業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)として注目される、AR(拡張現実)を活用した集客アイディアについてお伝えしてきました。
最近は、手軽な料金で利用できるARアプリ作成ツールや、無料でダウンドーロできるARナビゲーションアプリなどもたくさん登場しています。
Z世代・ミレニアル世代にアピールするためにも、ARの導入を検討してみましょう。