チャットボットで充実のおもてなしを
AIの実用化が急速に進む昨今、ホテル経営者はどのように競争力を身に付ければよいのでしょうか。このことは、これからの時代でホテルが生き残るために非常に重要な課題です。
いかにホテルでのAI活用をすすめていくのか、先行事例や最新技術へ知見を深め、今からよく洞察しておきましょう。
この記事では、AIの中でも特にチャットボットについて、基礎知識とホテルでの活用事例をまとめています。
確実に来るAI活用時代に備えるための役に立つはずです。
ホテルAI活用マーケティング
近年企業のマーケティングにおけるAI活用が広まりつつあります。
業界は広く、広告業界、アパレル業界、自動車業界などに及びます。もちろん、観光業界やホテル業界も例外ではありません。
マーケティングにおけるAIの役割をひと言でいうと、「特徴をつかむ名人」です。
膨大な顧客データなどから、相関関係を見つけたり、新たな傾向を予測するのに長けています。顧客ひとりひとりの好みや行動がほぼ正確に予測でき、ハイパーパーソナライゼーションが可能なのです。
AIはマーケティングとの相性ぴったりなことが明らかですね。
これを自社ホテルに活かさない手はありません。ぜひAI活用を検討しましょう。
ホテルのAI活用はチャットボットが活発
チャットボットとは、「対話する(chat)」と「ロボット(robot)」という2つの言葉を組み合わせたもので、ユーザーと企業をつなぐコミュニケーションツールです。
ホテル業界では、このチャットボットをマーケティングの手段として活用しています。
AI型チャットボットと人工無脳型チャットボット
チャットボットといっても、さまざまな種類があります。
大きく分けて、AI型と人工無脳型の2種類。
AI型チャットボットは、人間が入力した文章の意味を理解・判断して、回答を導き出せるものです。前後の文脈から質問の意図を判断できるようになりました。
そして、AI型の大きな特徴には、回数を重ねるほど自ら学習してさらに会話や回答の精度があがっていくということが挙げられます。
AI型チャットボットは、人工無脳型よりも複雑な質問に回答でき、より自然な会話ができるのです。人間スタッフとの会話にも劣らないコミュニケーションの可能性を持っています。
人工無能型チャットボットは、あらかじめ決められたルールに従って自動で回答するものです。ルールベース型やシナリオ型とも呼ばれます。
例えば、よくある問い合わせ「チェックイン時間は何時ですか?」という質問に対し、「チェックイン」というキーワードを手がかりに「16時~22時です」という回答を設定します。
さらに次にくる質問を予測し、提案および情報提供もできます。例えば「チェックイン前の荷物預かりサービスを利用しますか?」といったものなど。
想定の範囲内に限られますが、よくある質問やルーティン業務には大いに役出つチャットボットです。
この記事ではAI型チャットボットについて書いています。
今やチャットボットは旅のお供
ホテルにおけるチャットボットは、主にゲストの予約をスムーズにしたり、問い合わせに回答したりといったことが可能です。
これによって、ゲストの問い合わせの80%を処理でき、スタッフは残り20%のみ対応すればよくなりました。このような業務の効率化もできます。
最近のチャットボットは、ゲストの滞在前から滞在中、滞在後まできめ細かなサポートを提供するようになっています。ホテルへのアクセス方法、ホテル近くのおすすめ観光地、滞在後のアフターフォローなど、ゲストの旅行をより良くするサポートをしてくれるのです。さらにチャットボットの対応によって時間にゆとりができたスタッフは、それぞれの仕事に最善を尽くし、より丁寧な接客や快適な空間を提供できることでしょう。
ゲストにとって大満足な旅行となること、間違いありませんね。
今やチャットボットは、単なる便利ツールから、旅のお供に欠かせないものになりつつあるのです。
次に、有名ホテルのチャットボット導入事例をみてみましょう。
有名ホテルは先駆けて導入
チャットボットを導入したホテルは、すばらしいおもてなしを実現しています。
マリオットホテル
マリオットホテルは先駆けて2014年にチャットボットを導入しています。
ユーザーが面倒くさがりな性質を持っていることにいち早く気づいたのです。
実際に、たった2-3の予約ステップやメンバーサイトへのログインでさえ面倒に感じているユーザーは多く存在します。そして、旅行計画を簡単にすればするほどユーザーは予約しやすくなるという傾向があります。
マリオットはFacebookのメッセンジャーを使ったチャットボットで、例えば下記のようなことが可能です。
- 世界中に4700以上あるマリオットホテルの宿泊予約
- 観光スポットやアクティビティの情報提供
- 滞在中のタオル補充の依頼
- メンバーポイントの確認
- 会員ランクごとの特典の確認 など…
マリオットホテルによると、滞在ゲストの2/3がチャットボットを使用していることがわかりました。滞在中にフロントまで出向いたり電話したりする必要なしに、質問したり要望を伝えたりできるチャットボットが支持されていることがわかりますね。
また、人間ではなく機械が相手なので本音を伝えられるという声もあります。
質問したい時にすぐに聞けるチャットボット、余計な気を遣わないで済むチャットボット。チャットボットの導入は、一人一人のゲストに合わせてサービスを提供し、顧客満足度をも高めています。
マリオットホテルは、チャットボットで競合ホテルとの差別化に成功している代表例です。
追随するホテル多数
マリオットホテルを追随してチャットボットを導入するホテルも多数あります。
例えばエドワードホテル 。
Edwardというバーチャルホストが、メッセージを通して滞在前から滞在後までまるで友人のようにサポートしてくれます。
- チェックイン当日に、予約した部屋の準備ができているかの確認
- スパマッサージの予約
- ルームサービスの注文
- 朝食提供時間の確認
- 追加アメニティの依頼 など…
他にもIHGホテル(ホテルインディゴ)。
Facebookメッセンジャーを用いたチャットボットを導入しています。
ネイバーフッドホストとして、まるで現地に住む人がガイドするようなローカル情報の紹介や案内をしてくれます。
ホテルから徒歩圏内のローカルフード店やお土産屋さんの情報提供、インスタ映えするイベントやアクティビティの案内と予約など、その土地ならではの充実したコンテンツを提供してゲストの旅行を最大限にサポートしているのです。
中小ホテルの現状
これまで、有名ホテルの事例を挙げましたが、中小規模のホテルはどうでしょうか。
AI活用が盛んになってきたとはいえ、中小ホテルではそこまで導入は進んでいません。長年、中小ホテルの経営者は傍観者としてチャットボットの活用に懐疑的でした。
しかし、ブッキングドットコムやエクスペディアといった予約サイトが、自社チャットボットを開発し実用化したことで変化が訪れています。
予約サイトというホテルに身近なサービスでチャットボットが導入されたことで、ホテルはチャットボットの便利さや予約率の上昇を目の当たりにしたのです。
株式会社アクティバリューズのチャットボット「talkappi」は、コンフォートホテルの全67施設に導入されています。
中小ホテルは今、チャットボットを導入するか否かの境目に立っていると言えるでしょう。自社ホテルに合った方法でできるだけ早くチャットボットを導入することによって、他社との差別化を図り競争力をつけていけるのは、今がベストタイミングかもしれません。
ホテル経営のマストアイテム
チャットボットは、確実に成果をあげられる強力なツールです。
その上、モバイル経由のインタラクション(ゲストからの反応)を得る重要なポジションに位置づけられています。蓄積されたデータをさらに分析し精度をあげれば、マーケティングやおもてなしがどんどん改良されていくでしょう。
膨大なデータを分析し、パーソナライゼーションを一層強化した結果、ひとりひとりのゲストにぴったりなサービスを提供できます。
つまり、チャットボットで他社との差別化を図り、業務効率を高め、さらにはゲスト満足度を向上させることができるのです。
チャットボットは、ホテル経営のマストアイテムとなりつつあります。
大きなホテルグループでなくても、チャットボットを活用する余地は十分にあるはずです。あなたのホテルにとって、チャットボットがどのようにマッチするか検討してみてください。
*この記事はQuicktextの協力をもとにWASIMILが翻訳・編集を行ったものです。
オリジナル記事:“How big hospitality brands are leveraging AI today”