ワーケーション宿泊客を獲得する5ステップ
「ワーケーション」という言葉を耳にする機会が増えました。ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせたものです。
旅先でリモートワークをしながら、勤務時間外には余暇を楽しむ、こうしたワーケーションの新しい働き方が日本でも少しずつ広がり始めています。
世界に目を向けると、働き方が多様化するに連れて、ワーケーションは大きなトレンドになりつつあります。ビジネスマンが海外出張に合わせて、レジャーを楽しむような動きも、ホテルにとっては見過ごせないものです。
本記事では、ホテル運営、レベニューマネージメント、ホテルマーケティングを担当されている方のために執筆しました。ワーケーションのお客様をホテルに誘致する方法を5ステップで簡潔にご紹介します。
ワーケーションをするお客様ってどんな人?
ここでは、欧米を中心としたワーケーションの顧客セグメントについて紹介します。日本の市場より少し進んだ動きを注視することで、日本でも今後訪れるトレンドをとらまえていきましょう。
さて、ワーケーションを行う旅行者は、通常は中小企業や多国籍企業で、役員や管理職などエグゼクティブであるケースが多いです。
他方、近年新しい顧客セグメントとして、リモートワーカーやフリーランスが挙げられます。働き方が柔軟になるにつれて、よりこのトレンドは広がっていくでしょう。
具体的には、
- 35歳から60歳までの男性または女性の高収入の企業役員
- 25歳から40歳までの男性または女性の可処分所得の程度が異なるデジタル・ノマド
- 35歳から50歳までの支出力を持つスタートアップの創業者(男性が多いが最近では女性も増えている。)
などが挙げられます。
ワーケーションを楽しむ顧客セグメントの大半を占めるのが、「ミレニアル世代とジェネレーションZ世代である」、という点が重要です。
この世代はデジタルに精通しており、年間平均7.4回の出張があると言われます。(出典:Matadornetwork, 2019)
そして、ミレニアル世代やZ世代の需要に応えて、企業側が働き方の柔軟性を向上したことで、以前よりもより、旅しながら働く環境が整いつつあります。
さらにご想像の通り、インターネット技術の発展に伴い、リモートでの作業の容易さが加わり、ノートPC、スマートフォン、良好なインターネット環境があれば、場所を問わずに仕事ができるようになりました。
ワーケーションがホテルに与える影響は?
2018年に行われたエクスペディア・グループ・メディア・ソリューションズの調査によると、ホテルへ宿泊する法人客の60%は仕事での滞在の必要性に加えて、その前後にレジャーを楽しむため滞在を延長しているとのことです。
また、ワーケーション旅行者の57%は通常のバケーション旅行と同じか、それ以上の金額を費やしています。
新しい顧客セグメントの獲得へ積極的なホテルは、ワーケーションの重要性が増していることを認識しています。認識するだけではなく、世界的に拡大するワーケーション市場に既に何らかの施策を打って対応を行っています。
通常、ワーケーションを行う宿泊客は高所得者であることが多く、出張や仕事関連の経費として、企業のクレジットカードを利用しています。
また、それに伴うレジャー活動の支出も行ってくれ、可処分所得が高いため、レベニューマネージメントを行うホテルの担当者にとっても、非常に重要なターゲット顧客になります。
ワーケーション顧客を獲得するには?
5ステップの実践的なヒントプラン
1. 短期滞在型のレジャーパッケージを提供する
Expediaによると、出張期間が2-3泊あるようなビジネス旅行者のうち、50%が合わせてレジャーを楽しむ可能性が高いといいます。
そのため、競合他社と差別化を図るには、ワーケーション顧客にアピールできるようなスペシャル短期滞在プランを提供し、お得な情報や目玉商品をプロモーションすることが重要です。
また、1泊多く宿泊すると10%オフ、2泊多く宿泊すると20%オフになるなど、段階的な割引を適用して、ワーケーションをするお客様に延泊を促しましょう。
2. ワーケーション旅行者が必要なサービスに焦点を当てる
ビジネスで滞在するお客様は、ホテルに多くの機能を求める傾向があります。例えば、高速で無料のインターネット、コワーキングスペース、会議室の利用、コンセント、ビジネスセンターへのアクセス、打ち合わせ場所への移動のしやすさ、などです。
加えて、ホテル内での衣類のアイロンがけ、食事のルームサービス、フィットネス利用などの追加サービスがあれば、ホテルのサービスをさらにワーケーション利用者向けに充実させることができます。
また、ワーケーション旅行者は、迅速で簡単なチェックインとチェックアウトを求める傾向もみえています。ホテルの中には、こうした要望に応えるために、オンラインチェクインやチャットボットの活用といったホテル向けテクノロジーを提供しているところもあります。
テクノロジーの導入にあたっては、まずは、PMS(宿泊管理システム)を利用し、迅速なチェックイン・チェックアウトをフロントで提供することから始めると良いでしょう。
3. 魅力的なレジャーサービスを提供する
リラクゼーションやエンターテイメントをワーケーションで滞在するお客様へ提供しましょう。
例えば、ホテル内のスパ、プロのマッサージ、鍼灸などのホリスティック・セラピーは人気があるサービスメニューです。また、ホテルの中には、ヨガやピラティスなどの人気フィットネスクラスを提供するケースもあります。
エンターテイメントのサービスオプションとしては、ホテル内に併設された映画館、アフターワークとして提供するカクテルサービス、ボウリング場、ライブミュージックなどが挙げられます。
自社ホテルではそんなサービス提供できない・・・と思われる方もいらっしゃるでしょう。
そんな時は、地元のエンターテイメント企業・観光業とパートナーシップを結ぶこともできます。例えば、ツアーガイド、文化体験、地元のランドマーク訪問、深海ダイビング、登山、ガイド付きハイキングなど、地元アクティビティといった観光サービスが考えられます。
各種サービスの割引をパートナー会社から提供してもらい、ワーケーション滞在するお客様にインセンティブを提供できます。こうした戦略と施策を考えていくことが重要です。
4. 超パーソナライズされた体験を提供する
ワーケーションのお客様にアピールする要素として、パーソナライゼーションは非常に重要です。
パーソナライゼーションとは、全員に同じサービスを提供するのではなく、顧客それぞれの嗜好性に合わせたサービスを提供していくことです。
実際、ホテル利用者の86%(Kahuna, 2019)は、パーソナライゼーションがホテルを選ぶ際の意思決定に影響すると答えています(Booking.com)。
そのため、顧客データを詳細なレベルで分析・活用し、お客様が真に望んでいるオーダーメイドな体験を提供することで、ホテルとしての魅力を高く評価してもらえます。
パーソナライゼーションを進めるには、例えば、好みの連絡方法(電話・メールなど)や旅行の目的といった基礎的な情報から、言語、年齢層、性別などの個人プロフィールも重要です。これらのデータを事前に収集して、お客様がホテルに到着される前から、ホテルの担当者がパーソナリティを把握しておけるようにしましょう。
他にも、食事や飲み物、タクシー予約のリクエスト、ルームサービスのリクエスト、部屋の好みなども要チェックポイントです。このような情報を得るために、チャットボットや事前のオンラインチェックインでアンケートを取るようなホテルも増えてきています。
5. リピーターになっていただく
ホテル向けの顧客管理システム(CRM)を活用すれば、よりお客様がどのようなサービスや製品を利用し、楽しんでいたのかを顧客データとして蓄積し把握することができます。
CRMを活用することで、クロスセリングの機会を特定することができますし、加えてお客様の潜在ニーズを把握することができるようにもなります。
宿泊後もチャンスを逃してはいけません。取得した顧客情報を元にリピーター特別滞在プランをオファーするなど、ワーケーション顧客のリピーター化を図りましょう。
リピーターになっていただけたお客様には、割引、無料サービス、ピーク時以外の特別価格などの特典を提供する。同僚へホテルを紹介してくれた方には、今後の宿泊料金の割引などのインセンティブを提供する、というのも一つの手です。
ワーケーションのお客様を誘致するための戦略を立てる際には、ただ宿泊してもらうだけではなく、ホテルを同僚に勧めてくれるか?またリピーターとして宿泊してくれるか?といった中長期的視点でプロモーション計画を練っていく必要があります。
こうした努力が結果的に、短期・中期・長期の各段階での成功に役立つのです。
まとめ
ワーケーション顧客を獲得できるホテルになるために
ワーケーションをする顧客セグメントは、ホテル業界では比較的新しい層です。でも、その成長度合いを考えると無視できない存在であることは間違いありません。
今こそ、このワーケーション顧客を獲得するための5つのステップを踏んで、ワーケーションホテルとしての地位を確立しましょう。
*この記事は、Xotelsの協力をもとにWASIMILが翻訳・編集を行ったものです。
オリジナル記事: “Bleisure, a new Target Market for Hotels: the 5-Step Plan for Success“