ホテルの価格戦略!客室タイプがレベニューマネジメントの強力なツールになる
あなたのホテルには、何種類の客室タイプがありますか?
また、客室タイプの価格設定はどのようにしていますか?
客室タイプは、あなたの思うままに設定できる要素です。
客室タイプと価格を正しく設定すれば、あなたのホテルの収益をあげてくれる強力なツールとなります。
この記事では、客室タイプの増やすことの重要性やメリット、価格設定のポイントをレベニューマネジメントの観点から解説します。
これまでのやり方を一度立ち止まって見直し、客室タイプを味方につけましょう。
幅広い客室タイプを持つことのメリット
まず、さまざまな客室タイプを持つことがレベニューマネジメントにおいて重要です。
なぜ重要なのか、レベニューマネジメントにおけるメリットを紹介します。
潜在顧客を含むいろんな人に届く
いろんな人に届くという点が、最初にあげられる最大のメリットです。
例えば、ファミリー向け、カップル向け、シニア向け…といった客室タイプを持てば、幅広い世代の人を惹きつけられます。
新婚旅行、卒業旅行、慰安旅行…といったシーンに合わせた客室タイプがあれば、さまざまな環境やライフステージの人に響くでしょう。
逆にプランが少ないと、取りこぼしてしまう可能性があります。
幅広い予算に対応できる
客室タイプが多いということは、料金タイプも多いということです。これは、ホテルを商業的に経営するにあたって非常に重要な点なので肝に命じてください。
ホテルにかける予算もひとぞれぞれですよね。
1円でも安い方がいいという人もいれば、ちょっと高くてもいいからよりよい宿泊を叶えたいという人もいます。
ここに2パターンの客室タイプを持つホテルがあるとします。
ーホテル①ー
- 客室タイプA10,000円
- 客室タイプB30,000円
- 客室タイプC60,000円
ーホテル②ー
- 客室タイプA10,000円
- 客室タイプB15,000円
- 客室タイプC20,000円
- 客室タイプD35,000円
- 客室タイプE50,000円
- 客室タイプF60,000円
ホテル①よりもホテル②の方が、さまざまな予算の人に対応できることがわかるでしょう。
異なる環境や世代のみならず、予算においても幅広い人に届くのです。
自動的にアップセルされる
多くの客室タイプ(料金タイプ)があれば1つの客室タイプが売り切れた場合、自動的に1つ上の客室タイプへアップセルされやすいです。
前述のホテル①とホテル②で考えてみましょう。
ホテル①の場合、客室タイプAが売り切れてしまうと、3倍の価格になる客室タイプBへアップセルする人は少ないでしょう。
ホテル②の場合、客室タイプAが売り切れたとしても、+5000円の客室タイプBへのアップセルが選択肢に入りやすいです。
多くの客室タイプを持ち、細かな価格設定を行えば、自動アップセルも実現可能なのです。
ホテルの客室タイプを増やす
客室タイプはむやみに増やすのではなく、明確な目的を設定しゲストのニーズを満たすものでなければなりません。
ホテルの客室からの観点と、ゲストニーズからの観点、双方向の視点が重要になってきます。
各客室タイプの目的から考える
それぞれの客室タイプが作られた目的を明確にしましょう。
目的は、どんな人が(who)どんなシーンで(when)なぜ(why)使うのかを考えていくとわかりやすいです。
例えば、オーシャンビュー付きダブルベッドの客室タイプの場合。
- どんな人が(who) カップル
- どんなシーンで(when) 旅行、記念日旅行
- なぜ(why) ロマンチックな景色だから
客室タイプの目的を明らかにすれば、おのずとコンセプトやターゲットも絞られますね。
客室をどのような目的で活用するのかをさまざま考えれば、客室タイプの種類も増やせるはずです。
ゲストのニーズから考える
ゲストからの評価や口コミ、要望をもう一度くまなく確認してみてください。
もしまだ満たされていないニーズがあるとしたら、そのニーズを満たす客室タイプを今すぐ作るべきでしょう。
すでに利用したことがあるゲストからの意見は、最も良いアドバイスなのです。
評価や口コミ以外にも、世の中のトレンドを見据えすばやく時勢を捉える方法も重要です。
今では、テレワークやワーケーションに対応した客室タイプの需要が伸びてきています。作業用デスクと椅子を設置したり、より安定したWi-Fi環境を整えたりして客室タイプを増やせます。
さらに、SNSがますます発展することを見越して、拡散されやすい客室タイプを用意することもひとつです。タオルアートやバラ風呂など思わず写真を取りたくなるような演出をしたり、朝日がきれいに入る客室を推してみたり、アイディアはさまざま生まれるでしょう。
料金設定の仕組みに重要なポイント
十分な数の客室タイプを作ったら、次に料金を設定します。
料金設定は売上に直結する重要な要素です。押さえるべきポイントを紹介します。
稼働率100%への理想的な道のり
美しいホテルとは、稼働率100%のホテルです。
すべてのホテル経営者は稼働率100%を目指さなければなりません。
90日前から当日まで、なだらかな曲線を描いて100%に達するのが理想的です(図1)。
NG例としては、時期尚早な100%(図2)や直前の100%(図3)です。
時期尚早な100%は、最初から安売りしすぎたせいですぐに完売してしまったケースです。もっと高く売れたかもしれないのにという機会損失につながります。
直前の100%は、最初に高く売ってしまい稼働率が伸び悩んだため、直前に大幅な値下げをしたケースです。
早めに予約する人は、価格に敏感で日程調整は柔軟にできる傾向があります。逆に、直前に予約する人は何よりも日程が優先事項で、価格はある程度受け入れられる傾向があります。このような傾向があるのに、早めの予約は高く・直前予約は安くと設定してしまうと、せっかくの販売機会を損失してしまうのです。
理想的な曲線を描くよう意識しましょう。
柔軟で大胆な価格設定
ひと昔前までは、1年を通して決められた料金の範囲内で客室を売っていましたが、この方法はやや時代遅れでしょう。
「もっと高く売れるのでは?」
「閑散期は価格を大幅に下げるべきか?」
いつも自分自身に問いかけ、今までの固定通念にとらわれない柔軟な価格設定が求められます。
とはいえ、やみくもに価格設定するわけにはいきませんよね。
例えば、次のような指標をパラメーターとして設定しましょう。
- 平日か休日か
- 季節(紅葉シーズン、クリスマスシーズンなど)
- 月や曜日
- 近隣で開催されるイベント
- 需要レベル
重要なのは、稼働率と予約ペースを常にチェックし、特定の客室タイプが売れていないときは論理的に分析&再調整をすることです。
競合ホテルの価格をチェック
同じエリアの競合ホテル価格動向も忘れてはなりません。
競合ホテルをチェックするときは、下記のポイントを考慮して自社ホテルと比較しましょう。
- ホテルタイプ
- ホテルランク
- 客室の広さ
- 客室数
同じようなホテルタイプとホテルランクの競合ホテルがあれば、必ずチェックしましょう。
その上で、各客室の広さ、客室数の順に考慮します。
客室の広さも同じ場合、自社の方が客室数が多いなら競合より低めに、自社の方が客室数が少ないならば競合より高めに価格を設定します。
さらなるレベニューを生み出すために必要なこと
幅広い客室タイプを確保し、適切な価格を設定したら、より収益を上げるためにあともう一歩コミットしましょう。
そのたった一歩が大きく結果を左右することもあるのです。
オーバーブッキングの手法
オーバーブッキングとは、実際の客室タイプの数よりも多くの予約を取ることです。
ここでは、キャンセルやノーショーを見こして、あえてオーバーブッキングさせることを指します。
ホテル業界だけでなく航空業界でもよく用いられている手法です。
この方法は、細かな価格調整は不要なので大変便利です。使用しているシステムやPMSで、どの客室タイプをどの程度オーバーブッキングOKとするのかを設定できます。
オーバーブッキングで稼働率を100%以上とし、キャンセルやノーショーによって最終的に稼働率100%を目指しましょう。
オーバーブッキングの手法は、蓄積データが十分にある客室数の多いホテルや長く運営しているホテルにおすすめです。小規模なホテルや新しいホテルでは、データや少なくキャンセルやノーショーの予測の正確性が欠ける可能性があるので、注意してください。
もし最終的にも稼働率100%を超えてしまった場合、ホテルに過失と責任があるように思われますが、世界一般的にはホテルの免責事項となっています。
もちろん、無謀なオーバーブッキングはホテルの信頼にも関わる重大な問題となってしまいますので、慎重に適切に行う必要があります。
到着前後のアップセル
宿泊予約が取れたら、それで終わりではありません。
アップセルする余地はないか、客室単価をアップする方法はないかを検討しましょう。
宿泊前のメールキャンペーンなどを打ち出し、ゲストに1つ上の客室タイプを紹介したり、お得なアップグレードを案内したり…。
客室のアップセルだけでなく、朝食オプションやレイトチェックアウト、スパ利用、駐車場案内など、収益をアップする機会はたくさんあります。
まとめ
ホテルの客室タイプの価格設定に、完璧な正解も完全な終わりもありません。
1度で満足のいく結果は得られないでしょう。日々、分析と試行錯誤で精度をあげていく必要があります。
たとえ満足のいく結果が得られたとしても、ずっと同じ方法が通用するとは限りません。あなたのホテルだけでなく、ホテル業界全体そして経済状況全体を見極めていく姿勢が重要なのです。
もし、あなたがこれからホテル開発に関わる、新規で開業を考えているステップであれば、ホテル開発の初期段階に取り組むべきレベニューマネジメントの考え方をまとめた「レベニューマネジメントで考えるホテル開発戦略」もぜひ、参考にしてみてください。