ホテルのインバウンド戦略|デスティネーションマーケティングを活用した集客アイディア
あなたのホテルでは、インバウンドの需要回復に向けて準備を始めていますか?
今はまだ、国内旅行者をターゲットにした集客施策に集中しているホテルがほとんどかもしれません。
しかし、IATA(国際航空運送協会)の見通しでは、世界の航空旅客輸送は2022年に、2019年の88%まで回復すると予測。
また、中国出境游研究所(COTRI)は、2022年には中国人観光客が1億2000万人にまで回復し、2023年には1億6000万人に達すると分析しています。
このように、訪日需要回復の兆しが見え始めた今、ホテル・観光業界で注目されている集客方法のひとつが「デスティネーションマーケティング」です。
この記事では、国内外のデスティネーションマーケティングの事例を挙げながら、中小規模ホテル・旅館が、今後のインバウンド集客のために、今から始めるべき施策のヒントをお伝えしていきます。
デスティネーションマーケティングとは
デスティネーションマーケティングとは、旅行の目的地(デスティネーション)を商品として捉え、その商品(目的地)を観光客に買ってもらう(訪れてもらう)ためのマーケティング施策を指します。
その地域に観光客がたくさん来るようになれば、必然的に、宿泊施設の需要も高まりますよね。
目的地をマーケティングすることで、地域ビジネスも大きな経済効果が得られるというのが、デスティネーションマーケティングの目的です。
すでに海外では定着している概念ですが、日本ではまだ認知度が低いことから、観光庁が「観光地域づくり法人(DMO)」を登録する施策を開始し、国内でのデスティネーションマーケティングを推進。
2023年5年3月31日時点での登録DMOは270件、候補DMOは56件となっています。
デスティネーションマーケティングの事例
デスティネーションマーケティングは、「ビジット・ジャパン事業」のように国単位で誘致活動を行うこともあれば、自治体や企業などが中心となって特定の地域のプロモーションを行うこともあります。
具体的にどのような施策が実施されているのか、国内・海外のデスティネーションマーケティングの事例をいくつか見てみましょう。
国内の事例
まずは、国内のデスティネーションマーケティングの事例です。
京都・嵐山の「スイてます嵐山」キャンペーン
京都・嵯峨嵐山地域の5商店街による嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会は、コロナ禍でインバウンド客が激減した状況を逆手に取り、「スイてます嵐山」キャンペーンを実施。
「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり」というポスターがSNSでも拡散され、売上現象に歯止めをかけました。
せとうちDMO
せとうちDMOは、広島県、兵庫県、岡山県、山口県、香川県、徳島県、愛媛県という7つの県による広域組織です。
海外の旅行専門マーケティング会社とパートナーシップを結んだり、日・中・英に対応したオウンドメディアや海外向け予約サイトの運営、動画マーケティング、SEO対策など、さまざまなデジタルマーケティングを行い、世界から認められる瀬戸内ブランド作りに力を入れています。
海外の事例
つづいては、海外のデスティネーションマーケティングのなかでも、とくに評価が高いものを2つご紹介します。
ヘルシンキ空港「#LIFEINHEL」
ヘルシンキ空港は、中国の俳優・朱晓辉(Ryan Zhu)氏が、30日間ヘルシンキ空港で生活する様子をSNSで配信。
この企画により、ヘルシンキ空港が優れた空港であることをアピールすると同時に、中国人俳優を起用することで、アジアからアクセスしやすいヨーロッパの空港というイメージの発信に成功しました。
英国政府観光庁「#Escape the Everyday」
英国政府観光庁は、観光客を呼び込むためのより積極的なメッセージを発信するために、「#Escape the Everyday」キャンペーンを開始。
動画コンテンツでアクティビティや体験に関する情報を発信し、英国政府観光庁・VisitBritainの公式サイトへトラフィックを誘導するのが狙いです。
安全に日常から逃避できるさまざまな体験を紹介することで、コロナ疲れから脱出したい人々の感情に訴えるキャンペーンとなっています。
地域全体で集客する分散型ホテル
宿泊施設とデスティネーションマーケティングが融合した事例として、「分散型ホテル」も注目されています。
分散型ホテルとは、地域に点在する空き家などをリノベーションして、それぞれフロントや客室、レストランなどの機能を分散。地域全体で観光客を迎える宿泊施設の形態です。
イタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ(分散したホテル)」がもとになっているといわれ、近年、日本でもこのアイディアが浸透しつつあります。
分散型ホテルの事例
日本国内でも2018年に、岡山県小田郡矢掛町の「矢掛屋」が、アジア初のアルベルゴ・ディフーゾに認定されました。
ほかにも有名なところで、古民家再生プロジェクトによる分散型旅館「NIPPONIA」が、山梨県・小菅 源流の村や、岐阜県・美濃商家町など、国内6つの地域に展開しています。
「暮らすように泊まる」というコンセプトが、サステナブルな旅を求める顧客層のニーズを満たしているのかもしれませんね。
ホテルxローカルビジネスな集客アイディア
デスティネーションマーケティングの成功のポイントは、ホテルと地域の連携です。
地域ビジネスや特産物、自然などを活用して、地域を活性化しながら、ホテルの収益向上につながるような施策を取り入れてみましょう。
地域の飲食店と連携して、お互いのゲストに紹介し合うといった施策なら、すでに行っているホテル・旅館も少なくないと思いますが、ほかにも様々なアイディアが考えられます。
地域ビジネスと連携した集客アイディアの例
- ホテルで地元の伝統工芸体験を開催
- クラフト体験・自然体験などのアクティビティの優待、オプション販売
- ホテルのレストランで地元の食材を使う
- 地域ブランドのアメニティを使用・販売
- 地元アーティストの作品を館内に展示する
WASIMILの追加サービス機能を使えば、このようなイベントやアクティビティ、アメニティの購入などを予約時にオプションとしておすすめすることも可能です。
お客様は自分で購入を決定できるため、押し付けがましくなく、クロスセルを成功させやすくなります。
地域ビジネスと連携してホテルの収益を上げる方法や、事例については、こちらの記事をどうぞ。
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント
効果的にインバウンド集客をしていくためには、デスティネーションマーケティングで地域地域全体をマーケティングすると同時に、ホテルとしての対策も重要になります。
下記のポイントをしっかりおさえて、海外からのゲストに選ばれるホテルを目指しましょう。
- 明確なターゲティング
- 多言語対応
- 支払い方法の多様化
- 地域の強みを活かした差別化
- SNSの活用
- 口コミを重視
では、ひとつずつ説明してきます。
1.明確なターゲティング
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント1つめは、ターゲティングを明確にすることです。
「インバウンド客」「英語圏」という漠然としたターゲットではなく、具体的な国・地域にターゲットを絞りましょう。
そうすることで、効果的にリスティング広告を配信したり、国によって使用されている検索エンジンや、検索習慣を分析することが可能になります。
2.多言語対応
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント2つめは、多言語対応です。
ホテルの公式サイトはもちろん、予約システムやリスティング広告、ホテル館内の案内などに対策が必要になります。
ただしこの際に、必ずしも多言語=英語とは限らないということを念頭に置いておきましょう。
あなたのホテルがターゲットとしている国で話されている言語、つまり、もっとも需要の高い言語を把握することが大切です。
3.支払い方法の多様化
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント3つめは、支払い方法の多様化です。
インターネット上のフォーラムでは、日本でクレジットカードが使えるかどうかや、両替を心配する書き込みが多く見られます。
また、観光庁による外国人旅行者に対するアンケート調査結果でも、クレジットカードやその他の決済方法が使えないことが、日本で困ったことの上位に挙げられています。
予約システムやPMSが、クレジットカード決済に対応していることは、海外からのお客様を受け入れるためには、必要最低限の施策といえるでしょう。
4.地域の強みを活かした差別化
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント4つめは、地域の強みを活かして差別化を図ることです。
中国や韓国からの観光客の中には、リピーターも少なくありません。
また、コロナ禍をきっかけに、オーバーツーリズムを避け、できるだけ密にならないサステナブルな旅への関心が高まっています。
そのため、定番の観光名所がない地域であっても、その土地ならではのディープな魅力をアピールすることで、観光客を惹きつけることは可能なのです。
例えば、サイクリストに向けた素敵なサイクリングロードや、農業体験など、住民にとっての日常が、海外からのお客様にとっては特別な体験になることも。
5.SNSの活用
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント5つめは、SNSを活用することです。
観光庁「訪日外国人の消費動向」の「旅行前に旅行情報源で役に立ったもの」のアンケートでは、個人のブログ(30.6%)についで、SNS(23.7%)がもっとも多い回答となっています。
特にリピーターの場合は、ガイドブックには乗っていないような定番以外の場所を訪れる傾向があるため、SNSでの情報収集はさらに重要視されることが予想されます。
まだホテルの公式SNSアカウントを運営していないのであれば、ぜひ積極的に活用していきましょう。
参考までに、主なSNSプラットフォームの特徴を簡単にまとめてみました。
Facebook:
実名登録のため匿名性が低く、より信頼性の高い情報の収集が可能。そのため、インバウンド集客に向いています。
Twitter:
140文字という文字数制限があり、リアルタイムの情報発信に向いています。メリットは、拡散力の強さです。
Instagram:
写真や動画がメインのSNSなので、日本語がわからない観光客に対しても、ホテルの魅力が伝わりやすいのが特徴です。ハッシュタグを上手く活用すれば、情報を拡散することもできます。
6.口コミを重視
ホテルの効果的なインバウンド集客のポイント6つめは、インターネットやSNS上の口コミを重要視することです。
先ほどもお伝えしたとおり、訪日観光客の多くは、事前にSNSやインターネットで情報収集をしています。
トリップアドバイザーやBooking.comなどのOTAのレビューを参考にしている旅行者は非常に多いため、特にネガティブなフィードバックには迅速に対応することが大切です。
たとえネガティブなコメントがあったとしても、それに対して、ホテルが真摯な対応をしたことが分かれば、逆に良い印象を与えられます。
インバウンド集客に対応したホテル予約システムの選び方
せっかくあなたのホテルのウェブサイトを見つけてもらえても、予約システムが海外のお客様にとって使いづらいものだと、予約に至る前にウェブサイトから離脱される可能性が高くなります。
中小規模ホテル・旅館が予約システムを選ぶ際には、つぎのようなポイントを確認しましょう。
- ホテル向けの予約システムであること
- ホテルの規模(客室数)に適していること
- 顧客管理・分析機能が付いていること
- オンライン決済に対応していること
- セキュリティ対策がされていること
- 多言語に対応していること
- コストが見合っていること
なかでも、多言語対応、オンライン決済対応などは、海外からの宿泊客がホテルを選ぶ際の重要なポイントになります。
WASIMILの予約システムは10言語対応
WASIMILの自社予約システムは、10言語に対応。インバウンド集客にぴったりです。
また、クレジットカード決済機能が付いているため、外部の予約システムと契約し、余計なマージンを支払う必要はありません。必要なのはクレジットカード決済手数料のみで、ホテルの収益を最大化することができます。
もちろん、PMSやCRMと連携しているので、業務効率化やダブルブッキング、入力ミスなどのヒューマンエラー防止にも役立ちます。
まとめ
この記事では、ホテルのインバウンド集客の方法として、デスティネーションマーケティングについてお伝えしてきました。
地域全体ブランド力を高めることは、あなたのホテルの需要を高めることにつながります。
ローカルビジネスと連携して地域の魅力を発信しながら、多言語対応、SNSマーケティングなど、インバウンド集客に向けてホテルとしても準備を進めていきましょう。