コンタクトレスなホテルへ。マーケティングトレンドの変化と動向
コンタクトレスという言葉を聞いたことはありますか?
コンタクトレスとは”非接触”という意味。
2020年に発生したコロナ禍で、不特定多数の人がさわる箇所の消毒や共有スペースの除菌といった対策はもはや必至となりました。”できるだけさわらない”というニューノーマルが生まれたといえるでしょう。
このトレンドはホテルも他人事ではありません。
今こそコンタクトレスなホテルを実現し、新しいトレンドにいち早く乗りましょう。
この記事ではホテルのコンタクトレス化について、メリットや事例、具体的なテクノロジーを解説します。
コンタクトレス化が増加中
業界問わずコンタクトレス化が増えています。
コンタクトレスの代表格であるキャッシュレス決済のデータを交えながら、コロナによる変化を見ていきましょう。
世界のコンタクトレス化
コンタクトレス化のトレンドはビフォーコロナからありましたが、日本は海外と比較してそれほど普及していませんでした。
キャッシュレス決済比率の国別データを見てみましょう。
日本は海外諸国と比較して大幅にコンタクトレス化が遅れていることがわかります。
日本のコンタクトレス化
現在でもコンタクトレス化は海外の方がリードしていますが、この一年は日本でも増加しつつあります。
これは言うまでもなくコロナ禍の影響です。コロナ感染対策として、不特定多数の人がさわる物を避ける、人と接する機会を極力減らすといったことが求められるようになったからです。
実際にどれだけ増えたか、コンビニエンスストアにおけるキャッシュレス決済比率を見てみましょう。
少しずつ増加していることがわかります。コロナ終息が不透明な中、この傾向は今後も続くと考えられるでしょう。
ホテル経営にも欠かせないコンタクトレス化
コンタクトレス化のトレンドは、ホテル業界も他人事ではありません。ここでは、コンタクトレス化がホテルにどんな影響を及ぼすのか、事例も交えながら考えてみましょう。
コンタクトレス化のメリット
ホテルにとっての最初のメリットは、イメージアップや競合ホテルとの差別化ができる点です。
コロナ対策として求められているコンタクトレス化をいち早く導入すれば、ゲストは「真剣にコロナ対策をしているホテル」として良いイメージを持ってくれるでしょう。まだまだコンタクトレス化が進んでいるとはいえないホテル業界で、コンタクトレス化をしているだけでゲストの目を引き差別化できます。
次に挙げられるメリットは、コストやオペレーションを効率化できる点です。
現金を扱う作業や、よくある問い合わせに毎回対応する時間が削減できます。導入するときは多少コストはかかるかもしれませんが、一度導入すればその後のコストやオペレーションが節約できるでしょう。
また、ゲストにとってもメリットがあります。
メッセージアプリでスタッフとやり取りできれば、混雑しがちなフロントの密を避けられます。デジタルキーがあれば、不特定多数の人がさわる従来の鍵に対する不安が解消されます。
すなわち、ゲストはコロナへの不安要素が取り除かれ、安心安全な滞在ができるのです。
導入しているホテルの事例
日本国内のホテルで、いち早くコンタクトレス化を導入している事例をご紹介します。
アリストンホテル神戸では、【コンタクトレスチェックインプラン】を打ち出しています。事前決済を済ませれば、一度もフロントに立ち寄ることなく宿泊ができるのです。
アリストンホテル神戸は2020年5月の休業期間の間に、コンタクトレスチェックインをはじめ、客室のボールペンやコップ廃止と使い捨てペンや紙コップの導入といったコロナ対策を徹底的に準備してきました。
アパホテルでは2021年2月1日より、アプリを使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)を実施しています。【1ステップ予約・1秒チェックイン・1秒チェックアウト】をキャッチコピーとし、公式Webサイトのトップページで大々的にアピール。
QRコードを専用機にかざすだけでルームキーが発行され、チェックインにかかる時間はたった1秒です。チェックアウトはポストに鍵を入れるだけ、これもたったの1秒で終わります。
現時点で導入しているアパホテルは全国76施設、今後も続々と導入予定です。
ホテル業界の課題
ここで留意したいのが、何もかもコンタクトレス化すればいいというわけではないことです。コロナ禍で大打撃を受けたホテル業界にとって、当面の目標はポストコロナを生き残ることですよね。予算にも制限があります。費用対効果をあげるために、ホテルのイメージや主な客層にマッチしたコンタクトレス化を検討しましょう。
内装を重視した和風旅館ならば、館内に機械が増えるのはビジュアルを損ねてしまう可能性があります。人との交流が売りのゲストハウスならば、人と全く接しなくなってしまっては魅力が激減してしまうかもしれません。
機械を導入するにしても館内に合う色や素材を選んだり、交流の場として残すところは残しその他を徹底的にコンタクトレス化するといったように、慎重に検討と工夫が必要です。
ホテルオペレーションのコンタクトレス化
ホテルのコンタクトレス化にはどのようなものがあるのかを紹介します。
それぞれの概要とホテルとゲストにとってのメリットを解説します。
デジタルキー
デジタルキーにはさまざまな種類がありますが、ここでは2017年からヒルトンが導入しているデジタルキーを例にとって解説します。
デジタルキーとは、スマホアプリとBluetoothを使って施錠と開錠する仕組みです。客室だけでなく、エレベーターや駐車場、フィットネスセンターの鍵としても使えます。
スマホが鍵代わりになるのでゲストにとっては、わざわざ鍵を探す必要がなくなったりインキ―のリスクが減少したりするメリットがあります。
ホテル側も接触機会を減らせるのでコロナ対策にもなり、鍵の受け渡しという作業が減るので時間も節約できます。余った時間はパーソナライズなおもてなしに注ぐこともできますね。
無人フロント
無人フロントとは、文字通りフロントにスタッフが常駐していない形態のことです。
セルフチェックインシステムサービスを活用し、無人フロントを導入する施設が増えてきました。
ホテルとしては人件費の削減が最大のメリットとなり、その結果としてゲストは宿泊費を抑えられるといった恩恵を受けられるでしょう。
チャットボット
チャットボットとは、対話する(chat)とロボット(robot)を組み合わせた造語です。チャットボット導入でできるようになることは、例えば下記の通り。
- 観光スポットやアクティビティの情報提供
- 滞在中のタオル交換の依頼
- 追加アメニティの依頼
- ルームサービスの注文
- 予約内容の確認
- スパの予約
- 宿泊予約
小さな依頼からおもてなしに関わることまで、チャットボットで対応できます。よくある質問や一問一答式で答えられるような質問は、チャットボットを活用した方が時間やコストを効率よく回せるでしょう。
ゲストにとっても、気兼ねせずに依頼や質問できるのでよりリラックスした滞在を実現できます。
メッセージアプリ
WhatsAppやLINEなどのメッセージアプリを、ゲストとのコミュニケーションに使うトレンドは海外で特によく見られます。
気軽にコミュニケーションが取れるのでゲストの小さな不満や問題点を拾うことができ、真摯に対応すればレビューの高評価にも繋がります。
ホテルとしても、ゲストとのやり取りがメッセージとして記録されるので、スタッフ間での共有や引継ぎが簡単といったメリットもあります。
「海外旅行者とのコミュニケーションにWhatsAppを活用する」では、WhatAppの活用方法をより詳しくご紹介しています。
まとめ
この記事では、ホテルのコンタクトレス化の重要性と、具体的な事例を中心にどんなコンタクトレス化があるのかを解説しました。
まだまだホテル業界でのコンタクトレス化は進んでいませんが、人との接触機会をできるだけ減らすという概念は新しいスタンダードになっていくことは間違いないでしょう。
いち早く導入し、国内旅行者はもちろん、来たるインバウンドの獲得に向けて準備しておきましょう。